アルタイル*キミと見上げた空【完】
「強いね・・・」
そんなこと、うらやましいけど、私には到底マネが出来ない。
「けど・・・・お前を無理させたり泣かしたりしてしまうことは・・・・無理。それが俺のしたいことでも、やっぱり・・・・無理」
最後のほう、小さくつぶやいた言葉は風にさらわれる。
「何?どういうこと?」
「いや・・・・今の俺は無敵!ってことだよ。隣に好きな奴がいて・・・こんなの最高じゃなくてどういうんだよ・・・・」
肩をつかまれて、そんなことを言われたら・・・・もう目を閉じるしかないじゃない。
重なった唇からは潮の味がした。
「しょっぱい・・・・」
「どんな?教えて・・・」
かすれた声が体中を熱く駆け巡る。
目がまわりそう。
「どんなって、凱だってわかるでしょ・・・・・・んっ」
もう一度重なった口の中に、生温かいものが進入してくると、海の味はたちまちにかき消されてしまう。
吐息をもらしながら、必死でお互いを求め合った。
『海の味はどんな味?』
『凱の味・・・』
言葉に交わさなくても、考えてることはわかるんでしょ?
だから、気づかれたくない。
でも、もう気づいてる?
その甘美な味に混じってる、ほんの少しの罪悪心を。
誰かが言ってた。
罪が深いほどその味は美味しくて甘いんだって。
それならいっそ、甘く甘くもっともっと深く堕ちればいい。
凱と一緒なら・・・・・。