アルタイル*キミと見上げた空【完】
「サキちゃん・・・・」
何も・・・言葉が続かない。
そんな私の目の前でサキちゃんはその細い指先で涙を拭ってからふうっ、と息をついた。
「ガイは・・・・このところ、練習にもあまり出てなくて・・・・この遠征中にも査定は続いてる、ってわかってるはずなのに」
「査定?」
「そうだよ。来年もレギュラーとしてやっていけるか、遠征でも実力を発揮できるか、そんな厳しい世界だってわかってるはずなのに・・・」
あ・・・・それは、もしかして・・・。
視線を落とした私の前でサキちゃんは軽く下くちびるをかんだ。
「汐さんのせいだから・・・・」
「・・・・・」
「ガイが今日事故にあったのだって・・・・」
「え?」
顔を上げた私の前で、サキちゃんは反対にうつむいてつぶやいた。
「汐さんは・・・・不幸せにするだけじゃない。ガイも・・・修兄も・・・・」
目の前が真っ暗になる。
足元がゆれて思わず椅子に座り込んだ。
本当に・・・・本当に、そうだから、何もいえない。
サキちゃんは、自分の言葉に少し驚いたような顔をしてたけど、きゅっ、と唇をかんでくるりと背を向けた。
「私・・・・ガイのところに行くから」
バタン・・・。
閉められたドアを、私はただしばらく眺めていた。