アルタイル*キミと見上げた空【完】

病院からタクシーに乗り込んで、深く座席にこしかけると、不意に涙がこぼれた。


バッグの中のハンカチをとりだそうとして、手が止まる。


あれ?


「ない・・・・」


バッグの中にあったはずの、丸いキーホルダー・・・・あの、ボールのキーホルダーが、なくなってた。


今日は・・・大事な日だから、バッグの中に朝入れたのは覚えてるのに・・・。


「ない、ない・・・・っ」


「お客さん・・・?」


心配そうに、ルームミラーで私の顔をちらちら見る運転手さんに、私は行き先の変更をお願いした。


「すみません・・・・・B体育館にお願いします」


なぜかはわからない。


けど、もしかしたら今日の試合があったその体育館にあるんじゃないか、って。


そこにおとしてきたんじゃないか、って・・・思った。


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