おつかれマイハニー
花奈はその場にへたり込んで泣きだした。
私はドアを開けて病室を出た。
ちょうど通りかかった看護師の腕を掴む。
「私と一緒に運び込まれた人は……っ」
看護師の顔が曇り、彼女が今来た方向を指した。
私はその方向へ進んだ。
部屋の名札を一つ一つ確認する。
足がもつれて上手く歩けない。
突然鋭い痛みが足に走って転びそうになったとき、誰かが後ろから肩を貸して支えてくれた。
花奈だった。
振り払いたい。
けれど、痛みを通り越してほとんど感覚が麻痺した私には出来なかった。
悔しくて涙が出る。
花奈はある個室の前に辿り着くと、ドアを開けた。
私は壁に体を寄せて自分の力で立った。
「水雫、ごめんなさい……」
花奈は私の背に謝ると、どこかへ走り去った。
その病室に見つけた女性は、私に気付くと「水雫ちゃん……」と泣き腫らした顔をこちらに向けた。
もう一人の男性は肩を震わせている。
この瞬間、私の世界は回ることを止めた。