ちょっと待って、流れ星
清和さんはそこまで言ってから、深呼吸した。まだまだ続きそうな話はきっと複雑で、大きい。

わたしはそんな大きい渦に巻き込まれてしまった。

膝の上に置いた手に無意識に力が入り、爪が脚に食い込んだ。


「血、とは言ってもね、両方の世界の血を持つ子供を得て、その子を満月の日の夜明け前に岩戸に永遠に閉じ込めてしまうことなんだ。要するにその子の亡骸を閉じ込めるということだねえ。

それを一人で遣り遂げることでやっと、太陽の力を得られるんだ。

それほど難しいことでも帝は太陽の力が欲しかった。だが自分には禁術を使う能力も無ければ、死にたくもない。そこで、だ。自分を慕う女を使うことにした。

力をその女が得ることができたとしても、激しく自分を慕う女ならば、手玉にできる。失敗しても女が勝手にしたことと何食わぬ顔をしていればいい。帝はそう考えた。

そして、帝に使われてしまったのが氷雨の母。彼女は美しい帝が全てになってしまうほど帝に騙されてしまっていた。

帝のためならと呼び寄せられたのがきみの父親。氷雨の母は禁術を使ったことで死ななかったものの、かなり衰弱した。が、しかし、栄介さんに近付き、結ばれ、子を得なければならない。

氷雨の母は倒れながらも、娘の氷雨に指示を出し、栄介さんに近付かせた。その間、帝は一度も彼女に会いにくることはなかったよ。」

哀しい話だ。想う人のためとそんなことをやってのけるなんて。

話ている清和さんの瞳も伏し目がちだった。

「だけど、栄介さんは別の人と恋に落ちてしまった。左大臣家の姫である藤様に。二人の愛は深く、何度も逢瀬を重ね、そして月子ちゃんが宿った。

そこで氷雨を使い、生まれた赤子を盗むという手段に出たが相手は左大臣家。その情報をいち早く察知した左大臣はわたしたち相模に命じ、赤子を護ろうとした。

しかし、その思いが一番強かった藤様は、栄介さんと生まれてくる赤子を元の世界に戻すことを決めたんだ。赤子が生まれるとすぐにわたしたちは動いた。氷雨の母の力が弱まり、穴ができていたことできみの父親ときみを送り返せたんだけどねえ」
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