ちょっと待って、流れ星
茜さんは少し雲がかかった満月が描かれた襖の前で止まった。そして、そろそろとそこを開け、新しい蝋燭に火をつけ、部屋は照らす。

「このお部屋を使ってください。奥の扉の中に新しい着物も入ってます。寝巻にしてくださいね」

さあさあ、と茜さんに促され、部屋に入った。畳が新しいのか草の匂いがする。

そうと奥の扉を開けると、言われたように白い着物がきちんと畳まれていた。

「もしよければ、着替えをお手伝いしますよ?月子さんの世界ではあまり着られないようですし……」

わたしのラフなTシャツに目配せしながら、笑顔のまま彼女は言った。

「いいえ、あの、大丈夫、です」

なんだか上手く言えなくて、言葉が切れ切れになってしまった。

それでも彼女はニコリと笑って、布団を敷いた後、滑らかな足取りで部屋を出ていった。

そうして一人になった部屋は広く、淋しい。丸い窓からは月は見えないものの、満天の星空が見え、少しだけ気持ちを紛らわしてくれる。

やっぱり父と母は同じ夜空を見ていたんだ。

わたしは無意識に窓辺に吸い寄せられ、そこに寄り添っていた。
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