ちょっと待って、流れ星
「月子さんがお召しになっているような着物はここにはありませんで、このようなものをお持ちしたんですが……」


薄い桃色の着物と朱色の帯が広げられた。肌ざわりはとても柔らかそうで、ゆったりとしている。

「お手伝いしますんで、袖を通してください」

茜さんに言われるがままに顔を洗い、その着物を着た。

見た目通り肌ざわりはすべすべしており、さらりとしている。着慣れない着物ということもあり、帯で絞められたところがなんとなく苦しかったが、それ以外はとても気に入ってしまっている自分がいた。

「よくお似合いです。やはりこの色を選んで正解だったわ」

茜さんの言葉が素直に嬉しい。ここに来て初めて笑えた気がした。

「笑顔が着物によく映えます」

「そう、ですか?」

「ええ、もちろん」

少しずつ、少しずつ、心がほぐれていく。

頭ではすんなり理解できないような話を聞いて、心がどこか強張っていたのだろう。

ぎゅうと薄桃色の着物の袖を握り締めた。
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