ちょっと待って、流れ星
着物には小さな花弁が描かれていた。握り締めた袖のあたりに多くちりばめられている。

「もうすぐ朝食の支度も終わるので、待っていてくださいね。呼びに来ますから」

「あの……手伝います」

何もしないままではいけないと思ったのだ。

茜さんは少し目を丸くしたが、すぐにまたふんわりとしたいつもの表情に戻った。


「ありがとうございます。ぜひお願いしたいんですけど、今日はもうほとんど終わってしまったんです。明日からお願いしていいですか」


そう言って軽く頭を下げた茜さんにつられて頭を下げた。

今日は残念だが、少しずつ何か始めよう。何かしてないと、答えの無い考えばかりを巡らしてしまう。

茜さんが部屋を出ていった後、昨夜同様、まあるい窓に寄り掛かり、外を眺めた。

そこはどうやら裏庭のようだったが、木々は綺麗に整えられており、木製の垣根は二メートルほどあるだろう。

やはり家というより屋敷という言葉が似合うなあ、なんて考えていたら、目の端に影が映った。

今まで誰もいなかったはずななのに、垣根の上に人が立っている。

太陽に輝く銀髪がただ美しかった。
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