ちょっと待って、流れ星
昨夜の、彼だ。


直感的にそう思った。

風にそよぐ白銀の髪が、まだわたしの瞼には焼き付いている。


「結界がはってあるようだね。なに、無理に入ることはしないさ」

嘲るように言った声も、あの時と同じだ。

昨夜は見えなかった顔は儚げで、すっきりと整っている。薄い青が似合う美しい人だった。

けれど、瞳は寒さを与えるように冷たくわたしを見下ろしていて、動けなくさせた。

「ただお前に挨拶をしにきただけ。術師に聞いたかもしれないけど、ぼくの名は朔。一応、覚えておいてよ」


ぶわり、と彼の空色の袴が翻った。ぎらりと白銀が光り、思わず目を閉じてしまう。

たった一瞬だった。

目を閉じたのはほんの少しだったのに、目を開けた時にはもう誰もいなかった。

彼は、わたしを殺すのだろうか。ただ自身の母に無言で差し出すのだろうか。

朔。

新月を意味するその名をぽつり、と呟いた。
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