ちょっと待って、流れ星
それから、どうしたのかはなんだか曖昧だ。

まずは、この世界に来たときのように清和さんが優しく肩を抱いて、外まで連れていってくれた。そして、牛車に乗せられて、隣には清和さんが乗って、わたしはただひたすら俯いていた。

清和さんは何も話し掛けてこない。ガタガタと牛車が揺れる音と、賑やかな外の声が耳を掠めていった。

簾を上げれば、どんな世界なのか、どんな人がいるのか垣間見れただろうに。

すぐそばでしているはずの賑やかな声もどこか遠くにあって、どくどくと心臓ばかりが喚いていた。


「月子さん、着きましたよう」

どれくらい乗っていたかなんて分からない。覚束ない足で促されるままに牛車を降りた。


本当にここに母親がいるのだろうか。

触れたこともなければ、見たこともない。わたしは、何も知らないのだ。

お父さんと出会い、わたしが生まれたことも、昨夜に初めて軽く聴いただけ。

本当に、母親、なのだろうか。

わたしは、どんな顔をして会えばいいのだろうか。


されるがまま、なされるがままに、ただ、ただ、清和さんに着いていった。

そうしているうちにいつのまにか、母親がいるという部屋の前。

「どうぞお入りください」

侍女が襖に手を掛ける。そろそろと、それは開かれていった。

わたしは立ち尽くしたまま。ただ、どきり、と心臓が縮こまったのだけが感じ取れた。
< 27 / 28 >

この作品をシェア

pagetop