ちょっと待って、流れ星
慌てて身を起こし、辺りを見回した。

黒、黒、黒。


黒ばかりの中にちらりと銀が光った。艶やかな銀色の髪がさらりと揺れている。それは高いところで一つに束ねられているようだった。

顔は闇に溶けて見えなかったが、柔らかい声色が耳に残っている。

その彼に近付こうと一歩、足を踏みだした。


「そこに、誰かいるようだねえ」


また違う男の声が屋敷の方から聞こえた。その途端、がさりと葉が揺れる音とともに銀色は消えてしまった。

待って、なんて言う暇は無くて、わたしはもう一つの声の主の方に向き直るしかなかった。

「おやおや、女の子じゃないかい。驚いたなあ」

声の主が手にした蝋燭の明かりが辺りを照らした。
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