血色バンビーナ
01 人の心
数人の影が、一つの影を囲むようにして立って居る。其処で行われているのは暴力。蹴ったり、殴ったりと、暴力が止む事は無い。彼等が飽きる迄其れは行われる。
「何とか謂えよ!」
「オラァ!」
ドガッ、という音に混じり、バキッと何かが折れる音がした。其の音がした瞬間、彼等の顔は蒼白に変わった。
ブラーンと、力なく垂れ下がる少女の腕。其の激痛で顔を歪ませる。
「やべぇ!!逃げろっ!」
其の場にいた者たちは、其の光景から目を背けるようにして、走り去っていった。残された少女は、只、痛みに耐えながらじっとして居た。
けして、泣く事は無い。
激痛で、泣きそうになっても下唇を血が出る程にまで噛み締め、只、じーっと、其のことが終わるのを待っていた。
「・・・お兄様・・・」
少女の唯一の心の救いは、兄だけだ。
親に見離されたが、兄だけは少女を思い、今までずっと世話をしてきた。
「御免なさい・・・」
ザクッ、と鮮血が飛び散った。
ざぁあ、といつの間にか雨が降っており、地に滴った血色を洗い流すように、止め処無く、降り注ぐ。
(憎いです。お兄様)
(私は何も出来ない自分が、)