ヴァンパイアに、死の花束を
「それって……ママの小説『ヴァンパイア†KISS』の!?あなた、ママの…あ…えっと『月島りお』の小説を読んだの!?」

キスの刻印は、ママの小説の中のヴァンパイアたちが使うとっておきのエクスタシーの魔法だった。

人間がヴァンパイアによって首にキスの刻印を受けると、たちまちそのヴァンパイアの虜になってしまう。

彼らのエクスタシーは、人間の比じゃないのだ。

「『月島りお』…本名は、『入江音花(いりえ おとか』。小説家で、君のママ。……そして、6年前に謎の死を遂げた。君は今、父親と12歳の妹と暮らしている」

信じられない。

ママの本名まで知っているなんて。

ママは本名は公表していなかったはずだ。

それに……それに……!

「どうし…て?『ヴァンパイア†KISS』を知ってるの?ママはその小説だけは、発表しなかったのよ!?」

「彼女は、その小説をヴァンパイアの間でだけ公表していた。あれは『小説』じゃない。彼女のヴァンパイアの思念を読む力と、予知能力で作り上げられた『記録』だ」

……『記録』……!?

「あ、あれが…事実だって言うの…?」

「ロンドンで弾劾に合いそうになり、日本に匿われていたヴァンパイアたちが、独自の進化を遂げたとしたら?」

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