ヴァンパイアに、死の花束を
「神音、こいつは…」

そう言いかけた穂高の声を遮るように、

「オレ、レイス。レイって呼んで、神音ちゃん。父は酒屋経営のヴァンパイア、母はキス魔のヴァンパイア。生まれたのは1年前だけど、肉体的には20歳そこそこ。天変地異みたいな『月の力』を浴びた父と母から生まれたオレは、こんなに成長しちゃいました。オレのキスが欲しかったらいつでも誘って」

と、まるでホストみたいにウィンクする。

「え……えぇえええええ!!!」

1年前に生まれたばっかりって、その色っぽい体で!!

それに、まさか……まさか!?

酒屋経営の父に、キス魔の母って………!

パニック寸前のわたしの横で、穂高は片手で頭を抱えてうなだれたように言った。

「…レイ、言うなって言ったろ?1年前に生まれたなんて、なんだかガキみたいで言いたくなかったんだ」

「…え!?」

そ、それじゃあ、穂高………も?

恐る恐る見上げた穂高は諦めたようにため息をついた。

「……1年前、イギリスのヴァンパイアの巣窟『ガイア』に、『月の力』をもつヴァンパイアによって『ガイア』が消滅するくらいの強いエナジーが放散されたんだ。君のママの小説で知ってると思うけど。その時、レイの母とオレの母は妊娠していたんだ。ヴァンパイアはもともとお腹の中では成長が人間より著しく早いけど、オレたちは生まれてからもものすごいスピードで成長した。そして気づいたら1年で20歳ほどになっていたってわけ」





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