ヴァンパイアに、死の花束を

レイの説明を穂高が続ける。

「オレたちは日本の『ガイア』でヴァンパイアや吸血鬼たちにいろんなことを教わった。日本に来て９ケ月の間、オレはヴァンパイアの世界を学びながら、神音をずっと見てたんだ。オレたちは『イヴ』の命を護るように育てられた。陣野が君の中にイヴを取り込んで、君を消滅させてしまう前に、なんとか君自身を殺さずに君自身が『イヴ』としてオレたちヴァンパイアの女神になれないか、『ガイア』はそう考えたんだ」

「…ど…して？なんでわたし自身を『イヴ』にしたいの？」

わたしが『入江神音』であることを失わずに、イヴになるなんて、そんなことできるのだろうか？

穂高はわたしをカウンター席に促すと、自分も座りカウンターにいるレイと視線を合わせた。

「まず第一に。ヴァンパイアの祖『イヴ』は強大な力を持ちすぎている。そしてその力は、一千年前に陣野によって狂わされてしまった。イヴはヴァンパイアの祖としての責任と陣野を愛する自分の心で狂ってしまったんだ。彼女はあまりにもオレたちヴァンパイアにとって危険すぎる。第二に。君はとても『イヴ』に向いているんだ」

穂高はまっすぐに横に座るわたしを見た。

うす暗い中で、バイオレットに光る瞳に、吸いこまれそうなほどに。

「君の血は、一千年前のイヴの血と１ミリの狂いもないほど同じなんだ。そして君は、その姿形も、イヴに瓜二つだと言われている。…驚くほどに、ね」