ヴァンパイアに、死の花束を

殺したい男

家に帰ると、雪音は少し咳をしながらベッドから起き上がってきた。

「雪音!起きなくていいから、寝てなさい」

「うん、お姉ちゃん。でも…雪音、今日は病院でお薬もらって…きたから、平気だ…よ?」

心配させないようにと微かに微笑む雪音をベッドまで連れて行く。

「ごめんね、診ててあげられなくて。今日はパパに病院に連れてってもらったの?」

「うん、お医者さん…とっても優しい、人だった…よ」

「そう。よかったね。早く風邪治すのよ」

雪音の額に触って熱がないことを確認する。

雪音は嬉しそうに微笑むと、そのまま寝息を立て始めた。


翌朝、わたしはいつの間にか雪音の部屋で雪音のベッドに寄りかかりながら寝てしまっていたことに気づいた。

雪音の熱がないことを確認して部屋を出る。

「…さむ」

少し寒気がした。

「やっばい。わたしも風邪引いちゃったかな?」

身震いして、穂高の言葉を思い出した。

『ヴァンパイアは、風邪引かないんだ』

『ヴァンパイアは』……か。

ヴァンパイアのように強靭な肉体を持ち合わせているわけではない『吸血鬼』には、その特権は関係ないんだね。

吸血鬼は永遠の命もないし、人間と同じくいつでも死と隣り合わせだ。

泉水も、きっといつでも『死』を感じて生きている。

……泉水。

あなたの望む『死』は、一体どんなものなの………………?





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