ヴァンパイアに、死の花束を
「あなたは…何も変わらない。殺して、全てを終わらせることなんて、できない。英一、あなたが生きてても死んでも、わたしと英二にとっては、何も変わらないんだってこと、やっとわかった」

英一は、意外そうな顔をして嫌みっぽく微笑む。

「つまり、どうせ変わらないなら、オレを殺さないってことか?」

泉水は俯いていた顔をゆっくりと上げて、微笑んだ。

その瞳は、死神のようだった。

人の死を他人事のように、憂う瞳。

………泉水………!!

「いいえ。変わるチャンスを与えるのをやめたのよ。……『どうせ』変わらないんだから」

風を切るような音に、英一は「ヒッ」と声を上げた。

泉水が風のような素早さで、英一に右手の手刀を振り下ろす。


「……泉水!!やめて―――――――!!!」



その瞬間。

赤い鎖のような長い縄が、泉水の手刀を巻き取った。

「!?」

大型の船の船頭に、全身黒づくめの男が縄を引きながら泉水を見下ろしていた。

男はギリリ…と縄を締め、泉水を少しずつ引きつける。

「古河泉水。一族の掟により、粛清する」

バラバラと暗がりから3名の男たちが出てきて泉水を取り囲む。

泉水は、眉を吊り上げると、呆れたように呟いた。

「ったく。ナンパなら一対一にしてもらいたいね」





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