ヴァンパイアに、死の花束を
ジリジリと詰められる泉水と吸血鬼たちの距離。

「それから、入江神音!あんたそこに隠れてなよ。まだあんたに死なれちゃ、わたしが困るんだからさ」

……ば、ばれてた。

レイも「やるな」って顔で、ヒュって口笛を鳴らした。

ダンっと突き抜けるような音をたてて、泉水が後ろ宙返りをする。

その力に押し切られるように船の上で縄を持つ男が、空中へと身を躍らせた。

着地した泉水が、風のような速さで3人の男の横を次から次へと移動していく。

赤い縄が、まるでダンスを踊っているように回り、揺れる。

泉水が立ち止った瞬間、3人の吸血鬼は、一緒に囲われるように縄に結ばれていた。

ギリっと牙で自分の手に結ばれた縄を引きちぎる泉水。

泉水はニッコリと微笑み、残る1人を見据えた。

「ナンパ男、一丁あがり」

その瞬間、ガンと空を切る渇いた音。

勝ち誇ったように微笑む泉水が、宙を見上げ、崩れ落ちた。

泉水の後ろで、座り込んだまま、黒光りする銃を前に突き出している英一。



レイの制止も構わず、わたしは飛び出した。



「……泉水――――――――――!!!!!!!」



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