ヴァンパイアに、死の花束を
泉水は、右肩を撃たれて倒れていた。

その肩から、おびただしく流れる血。

まさか…英一が銃を持っていたなんて。

わたしはうつ伏せに倒れている泉水のそばにペシャンと座り込んだ。

「…イヴ様だ」

「イヴ様がなぜ、こんなところに…?」

吸血鬼たちの驚愕の声がする。

「泉水!しっかりして!!」

泣き叫ぶわたしの横に立っていた吸血鬼が、わたしのそばにひざまづいて言った。

「イヴ様、私はシオと申します。どうか、我々と一緒に来ていただきたい。イヴ様がいらっしゃれば、このような危険な吸血鬼が現れることもないでしょう」

シオと名乗った吸血鬼は漆黒の長い前髪の中から、赤い瞳を光らせ、忠実な態度でわたしを見上げた。

「泉水は、危険な吸血鬼じゃない。泉水は、自分の人を愛する心に従っただけよ」

その瞬間、縄を切って自由になった男たちが両側からわたしの腕を掴み、羽交い絞めにした。

「なにするの!?」

「一緒に、来ていただきます」

シオは羽交い絞めにされたわたしの前を通り過ぎ、英一の前に止まった。

「お前も、もう用はない」

怯えたように見上げ、銃をシオに突きつけようとした英一の腕をシオが締め上げた。

「…うっ…何を!?」

「そこで待ってろ。泉水を殺したら、次はお前だ」

そして英一から銃を取り上げると、その銃口を倒れている泉水の頭へと向けた。



「ダ……ダメ――――――――――!!!!!」








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