ヴァンパイアに、死の花束を
穂高が言った一言。

『ヴァンパイアにつけられた傷は、人間の力じゃ、消えない』

わたしの傷は、ヴァンパイアにつけられた傷だというの…?

どんな病院に行ってもこの傷は消せないと言われた。

なのに、6年間も消えなかった傷をあなたはいとも簡単に消して見せた。

……ほんの一瞬のキスで――――。

まだ、信じられなかった。

傷が消えたこと以上に、ママがヴァンパイアかもしれないということ。

彼の口ぶりからすれば、ママはヴァンパイアだ。

そして、―――――――穂高、あなたも……………。




それじゃあ………わたし、も――――?




わたしの家は、学園から目と鼻の先で、家を出ると、薄暗くなった学園の校庭が見渡せた。

午後7時を過ぎているけど、いつもなら野球部が練習している校庭も、雨のためにお休みしているようだった。

赤い傘を差しながら、校庭に足を踏み入れる。

ここを突っ切ったほうが、近くのお店に近道なのだ。

雨に濡れた校庭の中、黒くうごめく影が、一瞬、わたしの視界を奪った。




………空に舞う赤い花びらのような、傘。









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