ヴァンパイアに、死の花束を
園田先生がなんで雪音を?

雪音が迷子になっていると思ったのだろうか?

それにしては……診察中だったはずだけど……。

「雪音、綺麗な女の人って、雪音を抱いてた人?」

雪音を抱きながら雨の中をパジャマ姿で歩いていた金髪の女性。

和風美人といったふうな日本人的顔立ちで、あの金髪は染めたものだろう。

「うん、女の人…『麻耶、帰ってきたの?』って、雪音をだきしめた…の」

麻耶………。

あの時も彼女がその名を出したことを思い出した。

あの沙耶っていう女性の…娘なのだろうか?

蒼白い顔をして夢遊病者のように歩いていたあの女性。

「雪音、知らない人に連れていかれて怖かったでしょう?」

覗きこみながら言うと、雪音はふるふると首を振った。

「…怖くなかったの?」

あんな目にあって怖くなかったなんて不思議だった。

優しい雪音のことだから、わたしに責任を感じさせないようにそう言ったのだろうと思っていたその時。

雪音はぽつりと言った。

「あのお姉ちゃん…とても優しい、人。園田せんせのほうが…怖い。お姉ちゃん…『ヨシキが殺した』って……」

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