ヴァンパイアに、死の花束を
翌朝、わたしは予想通り風邪をこじらせてしまった。

体がけだるく、頭が重い。

「…やっばいな」

病院に行って結局風邪をこじらせるなんて、ばかみたい。

熱が少しあることを感じながら、雪音の様子を見に行った。

雪音は赤いうさぎのぬいぐるみをベッドの横に置いて、寝息をたてていた。

まだ眠っている雪音の額に触れてみる。

熱はなさそうだった。

「お姉ちゃん?」

雪音はゆっくりと瞳を開けた。

「ごめん、起こしちゃったね。雪音、気分はどう?」

「うん…雪音、だいじょおぶ」

「そう。お姉ちゃん、今日も学校休むけど、雪音は行ける?」

「うん、雪音、行ける…よ。お姉ちゃん…だいじょぶ?」

雪音は体を起こして心配そうにわたしを見つめた。

「大丈夫。雪音は心配しなくていいから、起きて学校に行く支度しなさいね」

雪音の頭を撫でて、部屋を出た。

雪音の部屋の前でふっと立ち止る。

昨夜寝付く前に、頭の中を駆け巡ったいろんなこと。

休んでいる暇などないけれど、園田先生が吸血鬼だと確信をもってからでないと、行動はできない。

吸血鬼でもない人に、わたしたちの存在を知られることはなるべく避けなければならない。

レイが調べてくれるにしても、もう少し時間がかかると思うし。

思って、不安になった。

園田先生が『イヴの欠片』の持ち主だとして、死へと誘われる彼を止めることなどできるだろうか?

ほんのちょっと、医者と患者として接しただけの彼を。

< 159 / 277 >

この作品をシェア

pagetop