ヴァンパイアに、死の花束を
「……ふ…ぐっ……!」

羽交い絞めにされ、口を押さえられたとこまでは記憶があった。

……だ……れ…?

意識が遠のく。

抵抗することも叶わない強い力に、わたしの体はうなだれる様に力を失った。

「間違いない……今度こそ、イヴだ…」

……イ…ヴ…?

……わたしは、イヴじゃ、ない………。

…………ママ…。







………ここは……?

次に気づいた時、わたしは、静まり返った空気と、湿気のあるカビ臭い匂いに、眉をしかめた。

仰向けになった状態で、暗い天上を見上げる。

狭い空間に、跳び箱や、バレーボールのネット、マットなどがひしめきあう。

「……ここは…体育倉庫…?」

「イヴ…目覚めたか…」

「!?」

ガバっと起き上ったわたしの目の前に、片膝を着いた知らない男が座り、わたしを覗きこんでいた。

「だ……れ…?」

20代ほどのその男は、野性味溢れる目つきでわたしを見回すと、

「まだ幼いが、美人だな。ヴァンパイアの男と血の味を知れば、どんどんいい女になる」

そう言って口から鋭く光る牙を突き出し、笑った。

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