ヴァンパイアに、死の花束を
……わたしを……イヴを殺す……!?

沙耶が鎖を解く音を聴きながら、わたしは次第に自分の顔が蒼白になっていくのを感じていた。

でも確かに、それは恋人にとって当然の行為かもしれなかった。

自分たちにとってはなんの意味もない『イヴ』という存在のために、恋人の命が失われようとしている。

そんな理不尽なこと、許されるわけが、ない。

「先生は…沙耶さんをとても愛しているのよ。ごめんなさい、わたしだってこんなこと……したくないのに。沙耶さんを殺したくなんか、ない!!」

沙耶はガチャリ、とはずれた足首の鎖を置いてわたしの頬を白い手で覆った。

「芳樹のは愛なんかじゃ、ない。わたしの愛を独り占めしたくて、娘まで殺したのよ。……わたし、彼から逃れたかったの。だから、『イヴ』が…『死』がわたしを選んだの。あなたのせいじゃ、ないわ」

「沙耶さん、死ぬこと以外に、逃れる方法もあるはずよ!……諦めないで」

沙耶は、零れる涙で瞳を輝かせながら、美しく儚げに、笑った。

「……沙耶…さん…」

キィとドアが軋んで開く音に、沙耶はビクリと体を震わせた。

「沙耶…何をしている?」

リビングの入り口に、突っ立ったまま沙耶を見つめる粘着質な瞳。

…………園田先生……!!



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