ヴァンパイアに、死の花束を
……牙。

ヴァンパイアの、牙………!

わたし、知っている。

この、鋭く光る牙を…………知っている……!!

「イヴ……オレのものになってもらうぜ」

口を塞がれ、マットに押し倒される。

……違う…違う!!

わたし、イヴなんかじゃないのに………!!

「……や………いや……!」

引きちぎられたシャツから見えるわたしの素肌に、男が舌を伸ばそうとしたその時。

「……ぐ…あ…あああ!!」

男の地から這い上がるような悲鳴が聴こえた。

鮮血が、雨のように降り注ぐ。

男の首から血が溢れ、男は身悶えるように床へと転がった。

直後、わたしは自分の頬に滴った男の血を忘れるくらいに、驚きで身を固めた。

長身の、しなやかな佇まい。

首の後ろで束ねた長髪に、少し、冷たい感じのするその、唇。

知的で、少し神経質そうな美しい顔にかけられている黒ぶちの眼鏡。

彼は、眼鏡をゆっくりとはずすと、胸のポケットにかけて、わたしを振り向いた。




「………陣野先生………!!」





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