ヴァンパイアに、死の花束を
『鬼』は、血に目覚めたばかりのわたしを見つめて言った。

「……いい女だ、神音。ゾクゾクするほどの、な」

……血の味を…知ってしまった。

わたしの体が求めるものを……知ってしまった。

涙がポトリ、と膝の上に落ちた瞬間、バタンという音が鳴り響いた。

「君のナイトのお出ましのようだ」

「…え?」

陣野先生は、素早い動きでわたしから離れると、倒れたままの沙耶を抱き上げた。

「先生!沙耶をどうするの!?」

「…彼女の審判は…これからだ」

そう言うと、先生は、沙耶を抱いたまま、風のように開いていた窓の外へと飛び出した。

「……先生……!!」

カタン、という音に、わたしはビクっとドアの方を向いた。

「……神音」

…………穂高………!!

じっと立ったまま、訝しげにわたしを見つめる穂高。

やがて、ぽつりと言った。

「…血の匂いがする…神音、そいつの血を吸ったのか?」

倒れている園田先生を振り返り、わたしはふるふると首を横に振った。

「それに…もう一つ…甘い濃厚な血の匂い……」

「!?」

………陣野先生の血の匂い……。

まだ口の中に残る先生の血の香りをわたしは喉の奥に押し込めた。

………穂高に知られるのが……怖い……!!




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