ヴァンパイアに、死の花束を
マンションの10階で降り、1番奥の部屋の前で止まった。

カードキーで部屋のドアを開け、少し乱暴な様子でわたしを引っ張りこむ。

「…ほ、穂高……待って!!どうしたの!?」

部屋に入ると、フローリングの床のリビングはとても広く、大きな窓からは、綺麗な夜景が見渡せた。

見ている間もなく、強く手を引っ張られ奥の部屋へと引きずりこまれる。

「穂高!?」

なんか、怖い。

いつもの穂高じゃ、ない。

ドサリ、と黒のベッドの上に落とされる。

仰向けに倒れたわたしの上に、穂高は物憂げな瞳で乗ってきた。

……ドクン、ドクン、ドクン……。

心臓が壊れてしまいそうだ…!

チャリ…と首の鎖に触れる穂高。

…そうだ、まだ首に鎖が巻きついたままだったんだ。

「……あっ……!」

穂高はわたしの喉に食らいつくように首の鎖を唇でくわえた。

ジャリ…と音をたてて口で鎖を解いていく穂高の牙が、ギラリ、と光る。

そして……穂高の瞳が、バイオレットに艶っぽく輝いた。

「……ん……」

鎖が当たっていた喉のヒリヒリと痛む部分に、穂高の唇が当たる。

吸うように、傷を癒すように。

………穂高の治癒の能力だ。

少しずつ傷が熱を帯び、痛みがひいてくるのを感じる。



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