ヴァンパイアに、死の花束を
10時10分前に、わたしたちは病院近くのOLがたくさんお昼に訪れそうなかわいらしい雰囲気の喫茶店に来た。

穂高と隣り合わせに4人がけの席に座る。

コーヒーを注文してすぐに、カランと音を立ててショートの髪型の明るそうな若い女性が入ってきた。

女性はふっとこちらを振り返ると、わたしたちを見つめたままこちらへ近づいてきた。

目の前で立ち止った女性が、ふっと笑う。

「腰までの長い髪の美人な女の子と一緒…か。お人形さんみたいだからすぐにわかったわ。彼氏さん、的確なご指示ありがとう。あなたが浅見くんね」

カラリとした笑顔で笑う女性。

……穂高…そんなこと言ったんだ……。

赤くなって穂高を見ると、穂高は少し照れたように目を逸らした。

「…オレは特徴ないからさ」

ぼそりと言う穂高に、女性は目を見開いて大きな声を出した。

「あなた、そんなこと言ったら世の男どもの反感買うわよ!すっごく綺麗な顔してるじゃない!」

言うなり、女性はドンと座ってウェイトレスに手を挙げた。

コーヒーとサンドウィッチを注文し、水を一気に飲み干す。

……こ、この人が…レイの元カノ!?

なんかすっごく威勢がいいというか……。

「あ、申し遅れました。わたし、石野桜(いしの さくら)。桜でいいわ。そこの病院の精神科病棟勤務の25歳。で、国枝沙耶さんのことを知りたいのね?ほんとはこういうこと守秘義務があっていけないんだけど、彼女の命が懸かってるらしいし、レイのたっての頼みだから、今回だけは協力するわ」



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