ヴァンパイアに、死の花束を
「神音はここにいろ」

穂高はそう言うと、車を降りて前後の車から降りてくる者たちを見まわした。

後方のワゴンから黒ずくめの男が5人。

前方の白い車から体格のいい男と、ふわりとした巻き毛の黒髪に赤い着物姿の女性。

その艶やかで、日本人形のような美女に、わたしは息をのんだ。

……ヴァンパイア。

一目でそれとわかったのは、彼女の、暗闇で光るバイオレットの瞳の高貴なまでの艶っぽさ。

穂高と同じ、平常は黒で、暗闇になるとバイオレットに光る類の瞳。

日本と外国の血が混じったような雰囲気は、まさにヴァンパイアと吸血鬼の混血に見えた。

涼やかな瞳に、薄く形の整った唇は上品で、高貴な雰囲気を漂わせている。

歳の頃は、わたしと同じ15、6歳に見えるが、丸みを帯びた顔は少し童顔で、なのに妙に色気があった。

その色っぽい彼女が、かわいらしく艶っぽい声で、笑った。

「フフ。穂高、半年ぶりね。ちっとも『ガイア』に帰ってきてくださらないんだもの。雅(みやび)、とても寂しかったわ」

「お前……竜華雅(りゅうげ みやび)」

硬直したように彼女を見つめる穂高をわたしはきょとんと見つめる。

「雅…どういうことだ?なぜお前が吸血鬼の連中と…。『ガイア』がイヴを護る指令を下したのは知ってるだろ?なぜ、邪魔をする?」

雅と呼ばれた女性は、楽しそうにコロコロと笑った。

「穂高がいない間に『ガイア』は別の判断を下したの。『イヴは危険因子。陣野火月とともに、抹殺せよ。それを邪魔する者も同様』。穂高、あなた一人ぼっちになっちゃったの。だから雅、あなたを迎えに来たのよ」

「…な…に…!?」

穂高が目の前の雅を凝視する。

……わたしが……危険因子……!?

「穂高、雅はあなたを助けたいの。言ったでしょう?一目見た時からあなたを好きだって。穂高…雅と一緒に行きましょう、ね?」





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