ヴァンパイアに、死の花束を
雅は華々しい鮮血のような着物の衣ずれの音をトンネル内に響かせ、穂高に近寄った。

そっと穂高の胸に添えられた白い絹のような手に、彼は何も反応を返さない。

ただ、目を細めただけだ。

「雅、君と一緒には行けない。オレはたった一人でも、オレはオレの意志で行動する」

「そう」

雅はため息のような声を吐くと、艶やかに紅の引かれた唇を歪ませた。

「そこの彼女、かわいい『吸血鬼』のような顔して、本当は悪魔のような『ヴァンパイア』よ」

たおやかに語る紅い唇。

……わたしが、吸血鬼ではなくて、ヴァンパイア?

「…雅、どういうことだ?」

穂高が頭2つ分は自分より小さな雅を見下ろす。

「“入江神音”……彼女は入江家の人間ではないわ。6年前、ヴァンパイアの血を隠し、その身を吸血鬼に窶(やつ)して入江家に入ったのよ。彼女の10歳までの記憶は作り物ね。吸血鬼の中でも“異端児”だった入江音花は彼女を入江家に受け入れた。その結果、音花は死に至った。それは、入江神音が望むと望まないとに関わらず、彼女が引き起こした悪魔の所業であることに間違いないわ」

とても信じられない、受け入れられない事実。

……事実?

そんなこと、信じられるわけが、ない。

わたしが入江家の人間ではない―――――ママの娘でも、パパの娘でも、雪音の姉でもないという現実。

そして―――――――ママの命を奪った悪の根源が、わたし。




―――――――――――――チガウ。


ワタシじゃ、―――――――――――――――ない!!!!!




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