ヴァンパイアに、死の花束を
意識が遠のいていくなかで聴こえた激しく何かがぶつかる音。

ガタンという音とともに、わたしの喉に急激に空気が入っていた。

咳き込みながら振り返った先で、園田先生が壁に体を寄りかからせて倒れていた。

「神音ちゃん、大丈夫!?」

レイがわたしを抱き起す。

「…レイ…助けて…くれた…んだ」

「当たり前だろ!?オレは“鬼”じゃない」

「ナンパ男だっけ?」

クスリと笑ってレイを見上げる。

「その名前も、今日から返上…かもね」

………え?

意味深に笑ったレイの後ろで、爆音のような激しい音をたてて炎が燃え上がった。

「………っく!」

別荘の中は、火の海だった。

もう、戻ることは到底できない。

このバルコニーに広がるのも時間の問題だろう。

「くそっ。足さえ怪我してなければ神音ちゃんを抱いてここから飛び降りるのもわけないのに!」

レイが悔しげに頬を歪める。

その瞬間。

階下から、陣野先生のよく通る声が響き渡った。

「神音!そこから飛び降りるんだ。私が受け止める」

………陣野先生………!



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