ヴァンパイアに、死の花束を
思うように動かない体で、わたしを抱きとめているレイを見上げた。

「神音ちゃん、ここは奴に助けてもらうしかないようだ。オレは、一人ならこの足でもなんとか降りることができる。君は陣野のもとへ飛ぶんだ」

……陣野先生のもとへ……!

「む、無理だよ!わたし、体が痺れて動かないし、ここ4階だよ!?」

レイはわたしの頬に触れながら瞳を細めてきっぱりと言った。

「大丈夫だよ。敵ながら陣野の力は信用していい。それにここで君を死なせたら、オレは一生穂高に顔向けできないよ、神音ちゃん。穂高に…会いたいだろ?」

………穂高。

その名を聞いて、熱がこもったように体が熱くなる。

自分の求めているものを、体がはっきりと知らせてくれる。

「…会いたい…!」

「…いい子だ」

額に、レイの柔らかい唇の感触が降りてきた。

短いキスのあと、レイはすかさずわたしを抱き上げ、柵の前に立った。

「陣野先生!神音ちゃんを落としたら、オレ、先生を一生女の子とデートできないようにしちゃうからね」

低く笑う陣野先生。

「それは困るな」

ふっと、体がレイの腕を離れ、空気を切るように落ちていく。

………怖い…!

空中で、何も体を支えるものがない恐怖。

地面に叩きつけられるイメージに、体が強張る。


「……怖い……陣野先生………!!!」


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