ヴァンパイアに、死の花束を
わたしとよく似た背格好の、同じような歳に見える色の白い少女。

ただ、肩まで伸びるふんわりとした金髪が、異様なほどにその姿に映えていた。

少し緑がかった深い蒼の瞳。

一瞬で綺麗だと感じる顔立ちなのに、彼女の伏し目がちで仄暗い瞳は、自らの美しさを消したがっているかのようだ。

黒のベストに黒のタイトなスカートを履いた姿で、靴のまま浴室に佇む少女に、わたしは後ずさった。

「…だ、誰!?」

言った瞬間気づいてしまった彼女が持っている物体に、体が戦慄を覚える。

少女は、わたしの視線に気が付き、その右手の物体を自らの顔の前に持ち上げた。

「…これ?護身用よ。だっていつ殺されるか、わからないでしょ?」

右手に光る刃渡りの長いナイフ。

彼女はそれを見て、可憐なほどの笑みを作ると、力なくナイフを落とした。

「…お願い!」

少女が叫ぶと同時に、わたしを力強く抱きしめる。

何が起こっているのかわからなくて、わたしはただ彼女の震える声を聞いていた。

「レイから離れて。じゃないと、彼は吸血鬼たちに殺されてしまう。…彼を死なせたくないの」

少女はほんとうに、心から震えていた。

……レイが、ほんとうに好きなんだ。

そう思ったその時、浴室の入り口から声がした。



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