ヴァンパイアに、死の花束を
レイは倒れている男の顎を指で押し上げると、刺すような視線で男を見下ろした。

「…で?またまた神音ちゃんになんの用なの?泉水ちゃんの次は、神音ちゃんの抹殺ってわけ?」

長い漆黒の前髪が零れる影から、男の深紅の瞳がのぞき、わたしはドキリとした。

この深紅の瞳の男……わたし、知ってる。

「…どうなんだ?…シオ」

そう。

吸血鬼のブラックリストに載っていた古河泉水を抹殺しにやってきた3人組。

そのうちの一人……名は、シオ。

シオの瞳は濃厚な血をそこで結晶させたかのように、意志の強い光を放っていた。

「…レイス様。私はイヴ様の抹殺など望んでおりません。…ここは、危険なのです。イヴ様にとっても、雪音様にとっても」

…ここが、危険!?

「では、お前は神音ちゃんを助けに来た…そういうことか?」

レイが眉をひそめてシオを見つめる。

シオは姿勢を正し、ひざまづくように立て膝をついてわたしを見上げた。

「イヴ様。我々吸血鬼の一族は、竜華雅の勢力からイヴ様を全力でお護りします。まだ竜華に取り込まれていない吸血鬼は数十名おります。…我々のアジトまで、来ていただいたいのです。そこなら安全です」

…吸血鬼の、アジト。

レイはわたしの横でふぅと一息、呆れたようにため息をついた。

「…それはいいけど、君ら、根暗だねぇ。ナンパはもっとスマートに。女性は花でおもてなしするもんなの!」


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