ヴァンパイアに、死の花束を
「ここは、神社の地下だよ、神音ちゃん。ここがほんとのシオたち吸血鬼のアジトってわけ」

飛び起きたわたしの目の先に、雪音が心配そうに座っていた。

「…おねえちゃん…だい、じょおぶ?」

雪音は今にも泣きだしそうな瞳でぎゅっとふとんの端を両手で掴んだ。

「大丈夫だよ、雪音。ちょっと目まいがしただけ」

雪音に微笑みかけた瞬間、部屋のふすまが開けられる音が聴こえた。

部屋に入ってきたのは、シオだった。

「神音様、おかげんはいかがですか?」

「…大丈夫です。ご心配おかけしました」

シオが、中へ入ってこようとしたその瞬間、レイが立ち上がりわたしを見下ろして言った。

「神音ちゃん、ちょっと綺羅の様子見てくるよ。…いい加減ふてくされて何しでかすかわかったもんじゃないからね」

クスリと可笑しそうに笑うレイに、思わずつられて笑ってしまう。

ふすまの横に立っていたシオは、冷静な顔で廊下に出ていくレイに声をかけた。

「外は、雨が降ってますよ」

「…そ。じゃあ、ますます手に負えなくなってるだろうね」

トンっと閉じられたふすまの前で、シオは微動だにせず去っていくレイの影を目で追っていた。

わたしはここに来てから気にかかっていた一言を口にするかどうか、思い悩んでいた。

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