ヴァンパイアに、死の花束を
ふっと力が急速に抜けたように唇を離し、綺羅はレイに身を委ねる様に体を沈ませた。
「…綺…羅?」
意識を失ったらしい綺羅の息はとても荒い。
「レイ!!綺羅、大丈夫なの!?」
レイは綺羅を抱きしめながら、彼女の首筋を凝視し、悔しげに瞳を細めた。
「…毒、ですね」
………毒………!?
わたしの後ろに立つシオの冷静な声がした。
綺羅の首筋にはうっすらと細い切り傷ができていて、血が滲んでいた。
「飛竜の見えない波動の毒が、先ほどの一瞬の交錯で計らずも女の首をかすったのでしょう」
パンッと鋭い音が雨の神社にこだました。
同時に、ヒリヒリと痛むわたしの手のひら。
「なぜ、そんなに冷静でいられるの!?綺羅が殺されていい理由なんて、ないわ!!」
思わずシオに平手打ちをしてしまった自分の手がとても痛かった。
でも、わたしのために、綺羅がこんな仕打ちを受けていい理由は、ないんだ。
シオは、手の甲で叩かれた頬に触れ、なんの感情もない顔で言った。
「なんと言われても、イヴ様以上に護るべき存在は…ありません」
その時、レイは綺羅を両腕で抱き上げ立ち上がった。
「……神音ちゃん、綺羅を連れて『ガイア』に戻るよ。あそこには吸血鬼専門の医者もいる。解毒剤くらい出してくれるだろう」
吸血鬼専門の医者……。
レイの言っているガイアは街の中心部に存在する製薬会社『ガイア』のことだろうと、すぐに察した。
でも、雅の話では、ガイアはイヴとそれに従う者の抹殺を指示したという。
そんなところに戻ったらレイと綺羅は……!
「レイ…そんなの危険だわ!!」
レイは綺羅を静かに見つめながら、いつもの低く艶っぽい声を出した。
「こんなに泣き虫の綺羅がオレのために危険を冒したんだ。危険でも、オレは行くよ」
レイはニッコリと微笑み、踵を返すと、雨にびっしょりと濡れた銀髪を揺らしながら鳥居を潜っていく。
「…レイ!!必ず……必ず戻ってきて――――――!!」
レイは振り返らずに手をひらひらと振る。
「あいよ、神音ちゃん」――――レイの背中がそう言っているように見えた。
「…綺…羅?」
意識を失ったらしい綺羅の息はとても荒い。
「レイ!!綺羅、大丈夫なの!?」
レイは綺羅を抱きしめながら、彼女の首筋を凝視し、悔しげに瞳を細めた。
「…毒、ですね」
………毒………!?
わたしの後ろに立つシオの冷静な声がした。
綺羅の首筋にはうっすらと細い切り傷ができていて、血が滲んでいた。
「飛竜の見えない波動の毒が、先ほどの一瞬の交錯で計らずも女の首をかすったのでしょう」
パンッと鋭い音が雨の神社にこだました。
同時に、ヒリヒリと痛むわたしの手のひら。
「なぜ、そんなに冷静でいられるの!?綺羅が殺されていい理由なんて、ないわ!!」
思わずシオに平手打ちをしてしまった自分の手がとても痛かった。
でも、わたしのために、綺羅がこんな仕打ちを受けていい理由は、ないんだ。
シオは、手の甲で叩かれた頬に触れ、なんの感情もない顔で言った。
「なんと言われても、イヴ様以上に護るべき存在は…ありません」
その時、レイは綺羅を両腕で抱き上げ立ち上がった。
「……神音ちゃん、綺羅を連れて『ガイア』に戻るよ。あそこには吸血鬼専門の医者もいる。解毒剤くらい出してくれるだろう」
吸血鬼専門の医者……。
レイの言っているガイアは街の中心部に存在する製薬会社『ガイア』のことだろうと、すぐに察した。
でも、雅の話では、ガイアはイヴとそれに従う者の抹殺を指示したという。
そんなところに戻ったらレイと綺羅は……!
「レイ…そんなの危険だわ!!」
レイは綺羅を静かに見つめながら、いつもの低く艶っぽい声を出した。
「こんなに泣き虫の綺羅がオレのために危険を冒したんだ。危険でも、オレは行くよ」
レイはニッコリと微笑み、踵を返すと、雨にびっしょりと濡れた銀髪を揺らしながら鳥居を潜っていく。
「…レイ!!必ず……必ず戻ってきて――――――!!」
レイは振り返らずに手をひらひらと振る。
「あいよ、神音ちゃん」――――レイの背中がそう言っているように見えた。