ヴァンパイアに、死の花束を
目の前で降る雨が、あの日の雪と重なって見える。

6年前、あの白い雪は鮮血で染まってしまった。

「先生……6年前、ママが殺されたあの日……」

ピクリ…と陣野先生のわたしを抱きしめる腕が微かに動いた。

―――――疑惑が、確信に変わっていく。

「あの場所に、先生が……いた」

ふわり、と先生の腕がわたしから離れた。

振り返らずに、わたしは静止したまま先生の言葉を待った。

先生の顔を見るのが、怖い。

わたしの記憶は確かなものじゃない。

でも、さっき綺羅が飛竜に襲われそうになって陣野先生の刃が彼女を救ったのを見た時、同じようなことがあったことを頭の奥で、感じた。

ママとわたしと雪音、そしてあの場所にいたのは通り魔の男だと思っていた。

でも、一瞬甦ったあの日の光景。

雪の上で鮮血に染まったママと、雪音の悲鳴。

『…お姉ちゃん、助けて―――――!!』

そして、わたしは、雪音に向かっていく刃に向かって飛び込んだ――――――――!!

ポタポタと涙が伝って、小刻みに肩が震えるのを必死で抑える。

あの“刃”は、わたしの額をかすめたあと、雪の上でガラスのようにはじけ飛んで水しぶきをあげた。

……そんなもの作れるの、陣野先生しか…いない。

「…ど…して?先生…なんでわたしたちを襲ったの………!?」





< 251 / 277 >

この作品をシェア

pagetop