ヴァンパイアに、死の花束を
寝間から2、3室奥の部屋で、わたしと雪音は日本の美を感じさせる朝食を前に、ちょこんと正座した。

12畳ほどの畳部屋に、わたしと雪音、それに白地に赤の小花柄の着物を着た女性のたった3名。

ここへ連れてきてくれたその女性は、透き通るような白い肌に、対照的なほど艶光りする黒髪を女性らしく結いあげていた。

目じりの温かい印象と、所作の優雅さが、彼女の雰囲気を優しいものにしている。

目の前の和テーブルに並べられた魚や煮物などの和食の数々に、舌鼓を打ちそうになる。

「…あ、あの、こんなにしていただいて…いいんでしょうか?」

恐る恐る女性の顔をうかがってみる。

女性はきょとんとした顔でわたしを見つめた。

そうすると、先ほどまでの大人っぽい雰囲気が少し消えてあどけない少女の顔になる。

…思っていたよりも、若いのかもしれない。

せいぜい20歳くらい…と言ったところか。

そんなことを考えているうちに、彼女は可愛らしい声でクスクスと笑いだした。

「ごめんなさい。イヴ様からそのようなこと言われるなんて、思いもしなかったものですから」

今度はこっちがきょとんとしていると、彼女は抑えた笑顔でまっすぐにわたしを見た。

「申し遅れました。わたくしは神取静流(かんどり しずる)と申します。イヴ様がこちらにご滞在している間のお世話はわたくしが担当させていただきます。イヴ様は、神音様というお名前もお持ちですが、どちらでお呼びいたしましょうか?」

あまりにも丁寧な取り扱いに、わたしはドギマギしてしまう。

「あ、神音でいいです!イヴ様なんて全然実感ないもの!」

それを聞いてニッコリと微笑む静流さん。

だけどすぐに心配げな顔になって囁いた。

「あの…兄が失礼をしませんでしたか?あの通り、頑固でかたぶつですので、神音様に何か失礼なことをしでかしたのではないかと…」

……兄?

「…あ、あのぉ…お兄さんって?」

瞬きでわたしを見つめ返す静流さん。

「兄です。神取志雄(かんどり しお)。深紅の瞳の前髪の長い暗そうな…」

「………えっ…えぇえええ~!!!」

シオ……って、こんなに可愛い子のお兄さんなの………!!





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