ヴァンパイアに、死の花束を
じっと不安げに見つめる静流さんになんだかドギマギしてしまう。

「あ…失礼というか、シオのあまりの忠誠心にびっくりしたというか……。あの、いつもあんな感じなんですか?」

冷たいと感じたことと、殴ってしまったことはなんとなく言えずに曖昧に返した。

彼女は薄く儚げな微笑みで逡巡するように宙を仰ぎ見た。

「志雄は、この残り少ない純血の吸血鬼の集団を束ねなければならないという使命感がとても強いんです。最近は西洋のヴァンパイアと日本の吸血鬼の混血の方がとても強い影響力を持ち始めましたので、余計にそうなのかもしれません。この吸血鬼の集団の中で、吸血鬼の強いエナジーを表す深紅の瞳を持つ者はとうとう兄だけになってしまいました。我々吸血鬼も…いずれ滅びる運命なのかもしれません」

最後にこちらを見て笑った静流さんの笑顔は、なんだか危うげだった。

護ってあげたくなるタイプとは、こういう人のことを言うのだろう。

この後、このアジトのいろいろなことを静流さんから聞きながら食事をとった。

ここには30名ほどの吸血鬼が住んでいること。

この地下1階の他に、地下2階があり、部屋は全部で50もあること。

普段は全員夜型の生活で静流さんはわたしに合わせて朝食を作ってくれたらしい。

そして彼らは、このアジトに住んでいないはぐれ者の吸血鬼たちが自分たちの存在を人間に感づかせるような行為を行っていないか、常に監視しているという。

人間を吸血していた古河泉水が載せられたというブラックリストの存在を思い出した。

シオは吸血鬼の先頭にたって粛清を行っているという。

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