ヴァンパイアに、死の花束を
「兄に嫌われるくらいなら、と…わたくしはいつからか兄を恋慕うことを自らに禁じました。その頃から…このアザが現れ、吸血されるとされないに関わらず体が衰弱しはじめたのです」
静流さんは、着物の上からアザのある腕の部分に触れた。
「兄への恋は…わたくしの生きがいだったようです…」
彼女の笑顔が痛々しくて切なくて、わたしも思わず涙を零した。
イヴの欠片は、死を望む者に現れる。
イヴという死神が、弱い心につけこんでその命を荒波のように奪い去っていく。
…自分の存在が、つらかった。
イヴという存在がなければ、彼女が恋することを自らに禁じても、体が死へと向かうことはなかったはずだ。
でも、きっとシオは………。
わたしが言いかけたその時、シオが苦しげな息を漏らした。
「志雄!起きてはだめ!!」
シオは蒼白の顔で、ふとんを引きはがし、制止する静流さんの体を突き飛ばした。
「…何をしている?私のことなどどうでも…いい。お前には神音様を世話するという仕事が…あるだろう」
シオは荒い息で立ち上がると、倒れている静流さんには目もくれず、わたしの両腕を掴んで立ち上がらせた。
「神音様、私のことなど構うことはありません。お部屋へお戻りくだ…さい」
シオの瞳は、とても冷たくて、深い深海のようだ。
底の知れない何かを秘めているように……。
「シオ…嘘よね?」
静流さんは、着物の上からアザのある腕の部分に触れた。
「兄への恋は…わたくしの生きがいだったようです…」
彼女の笑顔が痛々しくて切なくて、わたしも思わず涙を零した。
イヴの欠片は、死を望む者に現れる。
イヴという死神が、弱い心につけこんでその命を荒波のように奪い去っていく。
…自分の存在が、つらかった。
イヴという存在がなければ、彼女が恋することを自らに禁じても、体が死へと向かうことはなかったはずだ。
でも、きっとシオは………。
わたしが言いかけたその時、シオが苦しげな息を漏らした。
「志雄!起きてはだめ!!」
シオは蒼白の顔で、ふとんを引きはがし、制止する静流さんの体を突き飛ばした。
「…何をしている?私のことなどどうでも…いい。お前には神音様を世話するという仕事が…あるだろう」
シオは荒い息で立ち上がると、倒れている静流さんには目もくれず、わたしの両腕を掴んで立ち上がらせた。
「神音様、私のことなど構うことはありません。お部屋へお戻りくだ…さい」
シオの瞳は、とても冷たくて、深い深海のようだ。
底の知れない何かを秘めているように……。
「シオ…嘘よね?」