ヴァンパイアに、死の花束を
「神音様、もうすぐです。申し訳ありません。わたくしはエナジーがとても弱いので封印を解くのも時間がかかるのです」

地下1階の一番外れにある階段を上ったところの外への扉の前で、静流さんが両手を鉄の扉にかざして手から深紅の光を放出する。

静流さんのいる階段の何段か下で待機するわたし。

そのまま数分待っていると、ガガ…と音をたてて鉄の細長い地上への扉が開いた。

「…ふぅ。やっと開きました。神音様、さぁ、どうぞ外へ…」

言いかけた彼女の瞳が凍りついたのがわかった。

刹那、わたしの体は何者かによって羽交い絞めにされる。

「…だ…誰!?」

「…風馬!!」

静流さんが叫んだ名前にぞくりと背筋が凍った。

「へへ。やっぱりな。静流、お前は裏切ると思ってたよ。オレが居残り組だったのが運の尽きだな」

ぎゅうっと首を絞めるように力を込める風馬の腕をわたしは力いっぱい引き剥がそうとした。

「天下のイヴ様も、男の腕にかかっちゃおしまいだね。まぁ、これからゆっくり楽しませてもらうよ」

……させてたまるもんですか……!!

思い切り力を込めて風馬の太い腕を噛んだ。

「…ぐ…あぁ…!!」

牙を突き立てたわたしを風馬が思い切り振りまわす。

「…っこの…」

風馬がわたしを殴ろうとしたその刹那。

彼は突然宙を仰ぎ見ると、そのまま脱力するように床に倒れ込んだ。

「!?」


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