ヴァンパイアに、死の花束を
一瞬、瞳の端をピクンと震わせ、陣野先生はなにかを『感じる』ように動きを止めた。

その瞬間、一陣の風が吹き、わたしたち全員の動きが止まる。

鋭い風にわたしは一瞬瞳を閉じた。

ビュオッッ…………!!!

「!?」

激しく空を斬るような音に、瞳を開けた瞬間。

屋上の柵の上に立ち、赤いスカーフで陣野先生の首を後ろから締め上げている江島先生の姿が飛び込んできた。

「……江島先生!!!」

叫んで走り出すわたしを穂高も追ってくる。

近づくと、江島先生の乱れた白衣の下の『イヴの欠片』がもうなくなっていることに気づいた。

………江島先生……!!!

少し苦しげにスカーフを掴みながら、陣野先生は微笑み、低く囁いた。

「……冬子……私とともに…地獄に行きたいか……?」

その瞬間、江島先生のスカーフを引く手が少し、緩んだ。

江島先生の頬を伝う、涙。

江島先生はきゅっと唇を締めると、再びスカーフを強く握った。

「……ええ。一千年でも、わたしはあなたと一緒にいたい」

ふわっと夜の空に浮かぶ江島先生の美しい肢体。

屋上の柵から落ちていく江島先生とともに、陣野先生の体も柵を越えて屋上の向こう側に吸いこまれていく。




「……せ…せんせい……火月っ―――――――――!!!!!」




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