ヴァンパイアに、死の花束を
気がつくと、わたしは無我夢中で陣野先生を追って柵を飛び越えていた。

ここは4階で、目が回るほど地上からは遠いけど。

そんなこと考える余裕もなかった。

江島先生の白衣がヒラヒラと舞うように落ちていく。

その上から重なるように落ちていく陣野先生の肢体。

……体が重力に引きつけられるように、落ち始める。

―――――そのわたしを切なげな瞳で見つめる陣野先生の顔が、はっきりと、見えた。



―――――…………火月…………。




「………神音――――――!!!!」



グイっと両腕の下から、逞しい腕が伸びてきた。


……ガクンッ……!!

柵を挟んで穂高がわたしの体を背中から抱きしめる。


「……う…ふ…ぐ…ぅ……ほ…だか……」

力強く苦しいほどに抱きしめる強い腕。

「……っばかやろう…」

フードをかぶった穂高が後ろから自分の頬をわたしの頬に押し付ける。

宙ぶらりんの体が、先生と一緒に地獄に行きかけた自分の体が、今、穂高にしっかりと抱きとめられている不思議な感覚。

「…ふっええっ」

ほっとしたのと、落ちていく先生たちの気配に、わたしは嗚咽をもらした。

< 68 / 277 >

この作品をシェア

pagetop