ヴァンパイアに、死の花束を
………ドンッ……………!!!!

地上から響く嫌な重低音。

「……………!!!!」

怖くて、哀しくて、下を見れなくて瞳をぎゅっと閉じた。

………先生……江島先生…………陣野先生……!!!

風だけが流れる沈黙。

「…うっえっうぅ……せんせ…い…」

泣きじゃくるわたしの耳元で、穂高がいつもの冷静な声で囁いた。

「…神音、下を見るんだ」

「…っ…嫌だよ、穂高……見れないよ」

「…陣野が、君を見ているよ」

「!?」

意外な穂高の言葉に、わたしは瞳を開けて真っ暗闇の地上を見下ろした。



………暗闇に光る「深紅の瞳」。



――――――――陣野先生………!!!!



先生は、地上からわたしを見上げていた。

長身の体をまっすぐに立たせながら、江島先生を抱きあげている先生。

先生の深紅の瞳の上に、漆黒の髪が揺れる。

先生の瞳は、まっすぐにわたしだけを見つめていた。

この屋上から地上の距離を遥かに超えた、一千年の時をも超えて語りかけるような澄んだ、切ない瞳で。
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