ヴァンパイアに、死の花束を
「……陣野…先生……」

見える……。

暗闇だけど、わたしの『深紅の瞳』は、先生の姿も表情もはっきりと捉えることができる。

先生は、スっと、ほんの一瞬、流れ星のように闇に消え落ちるような、



―――――涙を流した……………。


「…せん……せ…」

瞳を伏せ、江島先生をそっと地面に下ろす。

江島先生の体は、人形のようにピクリとも動かなかった。

陣野先生はそのまま立ち上がり再びわたしを見上げると、吹きつける風に言葉を吹き込むように、囁いた。



『……愛している……………神音………』




…………神…音……?


わたしたちに背を向け、学校の外に向かって歩き出す先生。


…先生…先生にとって、わたしは『イヴ』じゃないんですか?


わからないよ、先生。

先生は一体、『誰』を愛しているの?



………先生、わたしも、わからないんだよ?


先生へのこの気持が一体なんなのか。


………先生。


――――――一千年前に、逢いたかった…………………。





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