ヴァンパイアに、死の花束を
ふわふわとした不思議な体と心の浮遊感。

まっさらな空の下、わたしは屋上の柵の上に腰を下ろす。

「…このまま、死んじゃおっかな…」

なんとなく呟いたわたしの体を後ろからふわりと包み込む胸。

……この胸、知ってる。

もう2度目だもん。

「…このまま、一緒に死んじゃう?」

頬に当たる温かい「彼」のほっぺた。

「…ううん。穂高が一緒じゃ、かわいそうだもん」

「……サンキュ。オレ…お前にまだ、キスもしてないから、死にたくない」

耳元に息を吹きかけるように囁く。

わたしは前を見たまま、言った。

「…用務員のおじさんにキスしたの、穂高でしょ?」

しばらくの沈黙が流れた。

ふっと呆れたように呟く穂高。

「…ばっか。キスしなくたって傷は治せるんだよ」

「え!?だって、わたしの傷を治す時、『ヴァンパイア・キス』したじゃない!!」

抱きしめられたまま、穂高を振り返った。



…………………え………………?



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