ヴァンパイアに、死の花束を
だ……抱いて……!?

ガバっとベッドカバーの中に潜り込む。

「…入江さん!?」

だって……そんなこと聞いちゃったらもう恥ずかしくて顔真っ赤になるのを止められない。

先生が…陣野火月(じんの かづき)先生が、わたしを抱いてくれたなんて……。

いっこうに潜ったベッドから出ようとしないわたしに、江島先生は軽いため息を吐くと、

「重症みたいね。恋の病はやっかいだから、ゆっくり休みなさい。先生はちょっと出るけど5分ほどで戻ってくるからちゃんと寝てるのよ、極度の貧血なんだから」

カタンとドアの閉まる音がして、保健室の中には雨の音だけが響いていた。

そっとベッドから顔を出す。

白く清潔な印象の保健室には、ベッドが3つあった。

1つはわたし、もう一つは空いているけれど、わたしのベッドと間を開けて並行に置かれている廊下側のベッドはカーテンで仕切られていた。

……誰か寝ているのかな?

…さ、さっきの会話聞かれたかも…。

ちょっと赤面しながら、自分のベッドの仕切りカーテンを引こうと起き上った。

直後。

シャっと音をたてて開けられた隣のベッドのカーテンに、わたしは思わずビクリとした。






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