ヴァンパイアに、死の花束を
「しっかし!1時限目の体育ってかったるいよね。ま、バスケは大好きだからいいけどさ」

明日美が少しうんざりしたように笑った。

「明日美は部活でバスケ毎日やってるしね。わたしは運動苦手だから、もっとうんざりだよ」

腰まである長い黒髪を一つに束ねた。

今朝からまた少し、異様な渇きの他に、貧血っぽい体の不調を感じていた。

『神音はまだ吸血行為に目覚めてない』

穂高の言葉が頭に浮かぶ。

わたしも、もうすぐ……なのかもしれないと思うと、少し怖くなった。


今日の体育は「バスケ」で、隣のB組と合同だった。

ジャージに着替えた2クラス全員で準備運動をする。

その中で、運動に加わっていない制服姿のままの女子が目に入った。

壁に寄りかかりながら見学している、妙に渇いた瞳の女子。

B組の「古河泉水(こが いずみ)」だ。

「あの子、また見学だね」

ヒソヒソと囁く女子の声が聴こえた。

彼女が運動しているのを見たことがないと、いつも明日美も言っているけれど。

冷めたというよりは、生気を失っているかのような渇いた瞳でつまらなそうにみんなを見ている彼女は、顔立ちはとても綺麗だけど、話しかける隙を与えないタイプだった。

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