ヴァンパイアに、死の花束を
泉水の体はしなるように、滑らかに、ディフェンスを抜き去っていく。

……信じられないスピードで。

そして軽やかにジャンプした泉水は、あっという間に3ポイントシュートを決めた。

鳴り響く歓声に無関心な表情の泉水。

そのまま彼女は手をあげると、コート外にいたチームメイトと交代し、コートどころか、体育館を出ていこうと歩き出した。

「……あ……!」

どうしよう、泉水が行っちゃう。

このまま彼女を行かせるのは嫌だった。

『殺してってどういうことなの?』

わたしは無我夢中でチームメイトの腕をつかまえると、

「体調が悪い」そう言って交代を伝え、泉水の後ろ姿を追いかけた。

後ろから体育教師の「入江、どこに行く!?」という怒鳴り声が聞こえたけど。

「保健室です!」そう言って体育館を出た。

古河泉水のあの渇いた瞳と、「殺して」というセリフ。

わたしはどうしても、その意味を知りたかった。


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