ヴァンパイアに、死の花束を
「…神音…そんな顔されちゃ……オレが困る」

穂高は瞳を揺り動かし、困ったように微笑むと、わたしの腕をスッと離して横を向いた。

「……ごめんね、穂高」

穂高はふわっとわたしの頭に手を乗せ、いつもの屈託のない笑みで言った。

「お前、わかりやすいな。ちょっとは男に気を持たせたほうがいいぜ」

ごめんね………穂高。

こんなわたし、好きになってもらう資格なんてないよね。

穂高の気持と、優しさに、涙が溢れた。

「ばっか、泣くなって!」

穂高がまた困ったようにわたしの頭をくしゃくしゃと撫でる。

「……神音、ちょっとサボらないか?いい場所、知ってんだ」

「…いい場所?」

「ああ。2人目の『イヴの欠片』も現れたことだし、行動開始しないと、な」

……そうだ、古河泉水。

彼女の渇いた瞳を思い出した。

「穂高!!古河さんがわたしに『殺して』って。彼女、死ぬ気だよ」

穂高はふっと表情を止めると、真顔に戻って言った。

「古河泉水。彼女は『吸血鬼』の一族のブラックリストに入ってる」

「……ブラックリスト!?」

「人間を殺すことを、やめられないんだ」

「!?」

……古河泉水、彼女の瞳は、枯渇しきって、


―――――全ての『生』を拒絶していた。




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